令和7年改正区分所有法等の解説
― マンション・団地の管理組合役員のための実務ガイド ―
このページでは、令和7年改正区分所有法等のポイントを、マンション及び団地の管理組合理事長や理事の方に向けて平易にまとめました。一次情報として「改正法解説スライド」を前提に、結論→理由→具体例→役員としてのアクションの流れで整理しています。個別案件の最終判断は、必ず専門家にご相談ください。
- なぜ今、区分所有法などが改正されたのか
- 改正でマンション管理・再生がどう変わるのか
- 管理組合役員として、いつまでに何を準備すべきか
- 管理規約をどこまで改正する必要があるか
※法解釈・個別案件の可否は、弁護士等の専門家に確認してください。
改正の背景 ― マンションを取り巻く「2つの老い」
築40年超のマンションが急増し、建物の老朽化と居住者の高齢化が重なっています。ストック数は増え続ける一方、管理不全マンション(外壁剥落、廊下崩落、ゴミ屋敷化など)も各地で顕在化し、行政代執行の例も出ています。放置すれば自分たちのマンションにも起こりうる課題です。
- 長期修繕計画が古く、修繕積立金が不足しがち
- 役員の担い手が不足し、意思決定が止まりやすい
- 建替えは4/5決議が原則でハードルが高い
改正法の全体像(3本柱の概要)
管理の円滑化 ― 日常管理と修繕が決めやすくなるポイント
(1) 集会決議の多数決要件の見直し
改正後は「出席者多数決」(委任状・書面議決も出席扱い)が基本となり、修繕や管理費・積立金の決定、規約の一部改正が通りやすくなります。共用部分の変更では3/4→2/3に緩和される場面も想定されています。
- 議決権集計の方法(出席者多数決)を議事運営要領に反映する。
- バリアフリー化・エレベーター設置など2/3で足りる場面を整理。
- 委任状・書面議決の様式を最新化し、出席扱いの説明を添付。
(2) 所在等不明区分所有者の母数からの除外
所在等不明とは「連絡不能で所在確認ができない所有者」。調査→裁判所申立て→認定→決議という流れで、母数から除外できます。「所在不明だから何も決められない」を解消する仕組みです。
- 名簿・郵便の戻り・連絡記録を整理し、所在不明の有無を把握。
- 認定申立てに必要な資料(調査経緯等)をテンプレ化。
- 認定後の議決母数の変化を議事資料に明記する。
(3) 専有部分・共用部分の財産管理制度
ゴミ屋敷、漏水、外壁剥落など放置された専有・共用部分に、裁判所選任の管理人を入れて対処できる制度です。周辺住民の被害が顕在化したら申立てを検討します。
- トラブルの記録(写真・日時・状況)を蓄積するルールを決める。
- 弁護士・管理会社と連携し、申立ての要件を共有する。
- 費用負担と回収の見込みを総会で説明する準備をする。
(4) 国内管理人制度
海外在住の区分所有者がいる場合に、国内管理人を選任して連絡・法的手続を円滑化します。規約で義務付けるかどうかを検討しましょう。
- 海外在住者の有無を名簿で確認し、連絡手段を整理する。
- 国内管理人を義務化する規約改正の要否を検討する。
- 管理会社が窓口となる場合の報酬・責任範囲を明文化する。
(5) 共用部分に係る損害賠償請求権等の一元的行使
理事長(管理者)が元区分所有者も含めて一括して損害賠償請求を行えるようになります。標準管理規約も、理事長が代理行使し、別段の意思表示を制限し、賠償金を修繕費に充当するルールへ改正されます。
- 規約に「理事長が一元的に行使し、修繕に充当する」旨を追加する。
- 議事録に、別段の意思表示を制限する条文の有無を明記する。
- 損害賠償金の入金・支出フローを会計で管理する方法を決める。
再生の円滑化 ― 建替え・一棟リノベ・売却・除却
建替え決議は原則4/5から、耐震性不足や外壁剥落等の客観的事由がある場合に3/4へ緩和されます。さらに「建物更新(一棟リノベーション)」「建物・敷地一括売却」「取壊し敷地売却」「取壊しのみ」など選択肢が増えます。
- 老朽・危険性が明らかな場合は3/4で建替え・売却等を決議可能に。
- 賃貸借の終了・補償ルールも整備され、紛争リスクを下げる設計。
- 団地・被災マンションは2/3要件など早期再建のための特例あり。
- 耐震診断結果や外壁劣化の記録を整理し、「客観的事由」の有無を確認。
- 建替え・一棟リノベ・売却の比較表を作り、説明会で共有。
- 賃貸人・賃借人への補償説明資料と窓口体制を用意する。
管理計画認定制度と新築時の管理計画引継ぎ
管理計画認定制度は、長期修繕計画・積立金水準・管理体制などを自治体が確認し、適正な管理を認定する仕組みです。改正により新築分譲時から管理計画を作成し、管理組合へ引き継ぐ義務が導入されます。
- 認定基準(修繕積立金水準、長期修繕計画の年数、管理体制)を自分たちのマンションでチェック。
- 認定取得を目指すかどうか、理事会で方針を決める。
- 修繕積立金の増額が必要か、試算表を作って総会で共有する。
- 修繕積立金は国指針水準と比べて不足していないか。
- 長期修繕計画は直近5年以内に見直したか。
- 管理会社任せでなく、理事会が計画を把握しているか。
管理会社が管理者を兼ねる方式への対応
管理会社が管理組合の「管理者(代表者)」を兼ねる場合、利益相反リスクがあります。改正で、重要事項説明と自社・関連会社取引前の事前説明が義務化されます。
- 重要事項説明の内容を理事会で共有し、議事録に残す。
- 自社・関連会社との取引は、見積り比較と事前説明を必須とする。
- 理事会のない管理方式では、総会での説明会開催をルール化する。
管理規約改正チェックリスト(標準管理規約改正との関係)
改正区分所有法に合わせて管理規約も見直す必要があります(特に標準管理規約の内容をほぼ真似て作成している場合)。以下の表は、主な改正テーマと標準管理規約の該当条文例、改正要否をまとめたものです。管理組合の実情に合わせて、理事会で検討してください。凡例:◎…区分所有法に合わせるため改正必須 / ○…改正が望ましい
| 主な改正テーマ | 管理規約の該当条文(例) | 改正要否 |
|---|---|---|
| 損害賠償請求権の一元的行使 | 標準管理規約 第24条の2等 | ◎ |
| 修繕積立金の使途・不足時対応 | 標準管理規約 第28条等 | ○ |
| 国内管理人の選任義務 | 標準管理規約 第31条の3等 | ○ |
| 総会決議多数決要件(出席者多数決への更新) | 標準管理規約 第47条等 | ◎ |
| 所在不明区分所有者手続き | 標準管理規約 第67条の3等 | ○ |
| 財産管理制度の利用と費用負担 | 標準管理規約 第67条の4等 | ○ |
よくある質問(FAQ)
A. 名簿・郵便の戻り・管理費滞納の連絡記録を照合し、返送封筒やメール不達記録を保存します。
※:証拠化が重要。裁判所申立て時に調査経緯を示せます。
A. バリアフリー化や昇降機設置は2/3決議で可能になる場面があります。概算見積もりと資金計画を先に確認しましょう。
※:長期修繕計画への反映と補助金情報をセットで調べます。
A. 改正法施行までに議案化が理想です。特別決議が必要な場合、早めの説明会が必須です。
※:招集案内と総会が、施行日令和8年4月1日をまたぐ場合は、適用条項や要件に注意が必要です。
※:改正法では、全ての議案について「議案の要領」を示すこととされました。
A. 建築士・不動産鑑定士・弁護士・行政書士・マンション管理士など多職種連携が必要です。初期段階で専門家チームを組みましょう。
※:補償・権利調整の枠組みを早期に共有すると紛争を防げます。
A. 国の標準水準と比較し、不足額と増額シナリオを示して総会で説明します。
※:段階的増額案と住戸別影響額を提示すると合意が取りやすいです。
A. 義務ではありませんが、海外在住者がいるなら規約で義務化することを検討してください。
※:災害・緊急工事時の管理・連絡体制強化が目的です。
A. 財産管理制度で裁判所選任管理人を申し立てられます。記録と写真を残しておきましょう。
※:被害状況の証拠化がスムーズな申立てにつながります。
A. 規約に「理事長が代理行使し、賠償金は修繕費に充当」と明記するのが安全です。
※:条文と会計処理(管理規約や会計規程)をセットで整備することが重要です。
A. 自社取引の説明義務と議事録整備が必須です。見積り比較をルール化してください。
※:利益相反管理が不十分だと責任追及のリスクがあります。
A. 理事長・理事会が主導し、必要に応じて専門家を同席させます。資料は短く、比較表で示すと効果的です。
※:議案書とセットで配布し、質疑時間を十分確保しましょう。
専門家への相談と参考情報
- 弁護士:建替え・補償・紛争対応、所在不明者申立て、賃貸借終了の合意形成。
- 行政書士:管理規約改正案・議案書・議事録作成、届出書式の整備、説明会資料作成。
- マンション管理士:長期修繕計画・積立金の見直し、管理会社との契約・運用チェック。
- 建築士・鑑定士:建替え・一棟リノベ・売却の技術的・経済的評価。
公的情報源:国土交通省・法務省・マンション管理センター等の公表資料を必ず確認し、最新の正式情報に基づいて判断してください。
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本ページは一般的な解説です。個別案件は状況を伺ったうえでご案内します。
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