精神障害の労災手続きサポート

心理的負荷による精神障害の労災認定を検討する労働者・事業主の方向けに、初期ヒアリングから認定基準の適用までのプロセスを整理しました。

労災認定の基本

労災認定の三要件

① ICD-10のF0〜F9(業務に関連して発病する可能性のあるものは主にF2~F4)に該当する精神障害の発病があること。
 F2:統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
 F3:気分(感情)障害
 F4:神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害

② 発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。

③ 業務外の心理的負荷や個体側要因で発病したとは認められないこと。

理論的根拠

「ストレス-脆弱性理論」に基づき、業務による心理的負荷の有無・程度を客観的に判断します。職務内容や立場を踏まえ、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかを基準に評価します。

ストレスと脆弱性をイメージした図

段階的なヒアリング(事実確認)プロセス

ステップ1:疾患と発病時期の確認 主治医の診断名(例:F32 うつ病エピソード、F43.2 適応障害)と発病時期を特定。既存の障害の悪化か、新たな発病かを医学的に確認します。
ステップ2:業務上の「出来事」を特定 発病前おおむね6か月の出来事を中心に、パワハラや顧客からの暴行・暴言、重大事故・損失、達成困難なノルマ、転勤・配置転換などを詳細に聴取します。
ステップ3:労働時間の客観的調査 タイムカード、入退場記録、PCログなど客観資料を収集。始業前準備、手待時間、持ち帰り残業・テレワークも労働時間として評価できるかを精査します。
ステップ4:業務外要因・個体側要因の確認 私生活上の心理的負荷(離婚、家族の死亡、金銭的損失など)や既往歴、アルコール依存等の個体側要因を把握し、業務起因性を整理します。

評価と分析(認定基準の適用)

心理的負荷の客観評価

別表1の具体的出来事に照らし「強・中・弱」を区分。同種労働者の視点で評価し、事後対応や職場環境の変化も含めて検討します。

「強」と評価される要素

支援・協力が欠如、裁量性がない、関連する「中」程度の出来事が重なり時期が近接する場合は総合して「強」と判断されることがあります。

ハラスメント評価の専門性

パワハラ6類型(身体的・精神的攻撃、切り離し、過大要求、過小要求、個の侵害等)を踏まえ、反復・継続して執拗に受けた場合は「強」と判断される可能性が高いことを説明します。

結論とサポート

心理的負荷が「強」と評価される場合、労災起因性が肯定される可能性が高まります。評価が明確でない事案や個体側要因が顕著な事案では、主治医に加え専門医(地方労災医員等)の意見聴取や専門部会での検討が行われることがあります。

請求書提出(事業主証明がなくても請求可能)、行政への問い合わせ、不服申し立て(審査請求・再審査請求)対応まで、労災申請プロセス全般を社労士が伴走します。

労災保険の「治ゆ(症状固定)」は完全回復のみを指しません。症状が安定し治療効果が期待できない状態を含み、投薬継続中でも治ゆと見なされる場合があります。

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